【書評】日本で働くのは本当に損なのか 日本型キャリアvs欧米型キャリア

このグラフを見て欲しい。
先進国における一人あたりのGDP額をグラフ化したものだ。
国は左からアメリカ、日本、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス、オランダ。
この中で日本は6位。ほぼ同水準でスペインとイタリアが並んでいる。

このグラフを見たら、誰もが「何で日本人は勤勉なのに一人あたりのGDPでは他の国に負けてるんだ?」と思うはずだ。日本人はまとまった休みすら取れないのが現実なのに、欧米人は1ヶ月単位の休暇を謳歌している、はずなのに・・・。

僕はいつも疑問に思っていた。
日本の会社のあり方って間違ってるんじゃないか?
効率が悪すぎるんじゃないか?・・・と。

そんな疑問が晴れないまま、先日面白い本に出会った。
それがコレ。

日本型と欧米型のキャリアの違い

「日本で働くのは本当に損なのか」では、その名の通り、日本型のキャリア形成方法は本当に割に合っていないのか?欧米型の方が良いんじゃないか?と言った疑問に真正面から答える良書だ。

まずは筆者の視点による日本型と欧米型のキャリアの違いについてまとめてみよう。

日本型

・終身雇用、年功序列、社内労働組合、新卒一括採用が基本。
・新入社員にゼロから教え込む。
・給与は「仕事」ではなく「人」で決まる(これが本当の能力主義)。
・基本的に正社員は幹部候補生で原則出世できる。
・社員には色々な経験をさせ適性を見るために配置転換がある。
・昇進が遅い。

欧米型

・終身雇用、年功序列、社内労働組合、新卒一括採用なんてない。
・新入社員でも経験が求められる。インターン等で即戦力を身につける必要がある。
・給与は「仕事」や「ポスト」で決まる。
・入社の時点からエリートコースと一生ヒラコースが決まっている。
・社内の配置転換はありえない。
・エリートコースの昇進は早い。

どうだろうか?
欧米と日本では根本的に違うことが良くわかる。
日本では一般的に「欧米では出世が早い」とか「残業も無くて休日も多い」と思われがちだけど、実は違う。

出世が早いのはエリートコースとして入社した一握りだけ。この人たちは超激務で残業だらけだけど給料は高い。一方で残業も無くて休日が多いのは一生ヒラの人たち。見事に分けられてるんだけど、日本ではそれが一緒くたになってるのだ。

欧米型のシステムの方が優れているの?

この本では、欧米型と日本型の会社の仕組みについて色々と比較している。
非常に論理的で理にかなった考え方を提示してくれるんだけど、筆者の意見を読むと、「日本型も決して悪いもんじゃないかも・・・」と思うようになるはずだ。

適材適所の配置、会社を色々な角度で見れるようになる人事システムなど、欧米からすると驚異的とも言える社員の能力のボトムアップがなされている。

しかしながら、日本型のシステムを最大限に悪用するブラック企業や、誰もが出世を前提とするために、女性が育休を長くとりにくいという問題もある。ここは欧米をまねる必要があると思う。

それから、とんでもないエリートを更に伸ばしてやることが日本は苦手だ。
出る杭は打たれる。こんな風習があるからこそカリスマは出てきにくいのだろう。

日本企業に勤める人はぜひご一読を!

この本を読むと、労働の在り方について考えさせられます。
欧米型の労働スタイルがが良いなぁ・・・と漠然に思う人はぜひ読んでみるといいでしょう。

日本型も欧米型もメリットとデメリットがあって、絶対的な優劣は決められないという事が分かるはずです。これはもう文化的な考えが礎になってるんじゃないかとも思えますね。

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